2011年5月15日日曜日

検索広告ビジネスの闇

 オンライン広告市場の成長に伴い、これを狙ったサイバー犯罪も拡大傾向にある。2010年6月、eBayの最高アフィリエイターとして知られるショーン?ホーガン氏(Shawn Hogan)がeBayから不正に報酬を得ていたとして告発された。

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 その額およそ2000万ドル(eBayは2006年に約1500万ドル、2007年に約500万 クリスチャンルブタン
ドルを支払ったとしている)。個人が得られる報酬としてはメジャーリーグのスター選手並みだが、これは氷山の一角のようだ。

 「同種の犯罪に荷担する人々はひと月で200人近く見つかっています」――ハーバードビジネススクールで経営学の助教授を務めるベンジャミン?エデルマン氏(BENJAMIN G.EDELMAN)はそう語る。

 同氏はデジタルマー ASTARIA RMT
ケットの専門家として教べんを振るうかたわら、主に米国や英国を中心とするクライアントからの依頼で、ボストンに拠点を持つ複数のサーチプログラムを駆使し、オンライン広告を土壌とした詐欺行為を見つけ出す仕事も行っている。前述のホーガン氏告発にかかわった人物でもある。エデルマン氏に広告詐欺のグローバルトレンドと検索広告ビジネスの問題について UGG ムートンブーツ
聞いた。

 オンライン広告詐欺の代表的な手法としては、iframe(Inline Frame)を使った手口がよく知られている。エデルマン氏は「例えばこのサイトを見てください」とスライドを示しながら、「これは私の“お気に入り”なのですが、一見してすぐに立ち去りたくなるような訳の分からないサイトです。これでどうやってお金を取るのか不思議に思うかもしれま フェラガモ 新作
せん。しかしソースコードを見てみると、2つのjsファイル(外部ジャバスクリプト)が呼び出されているのが分かります」と説明する。

 このcounter.jsとsutat.js(ありふれたファイル名だ)は、それ自体まったく問題のないものに見えるが、実は実行されると5つの“目に見えない”iframe(width/heightが0)を作成し、そこに広告を呼び出しているという。


「実際ここには30個のiframeがあり、ページを開くだけで100以上の広告が表示されることになっています。そして広告主はこの“見えない広告”にもお金を払わなければなりません」とエデルマン氏は続ける。さらに、SEOポイズニング(特定のキーワードに対して検索エンジンの最適化を行い、検索結果の上位に表示されるようにする)などを組み合わせること
で効率的にトラフィックを発生させ、広告の表示回数が上がれば、広告主から詐取する金額も大きくなる、というわけだ。

 また別の例では、あるフォーラムに投稿された内容に、eBayへのアフィリエイトリンクが隠されていたこともあった。そのフォーラムを閲覧した一般ユーザーの目には、誰かが投稿した何気ないメッセージの下に×印が2つ並んでいるよ
うにしか見えない(つまり画像の呼び出しに失敗したように見える)が、実際はeBayへリダイレクトされていた。そして仮にこのページを開いた人物が後で何かしらの商品をeBayで購入すれば、保存されたcookieによってここでもその誰かへの報酬が発生することになる。ほかにも、一見して退屈なバナー広告に、マカフィーやシマンテック、マイクロソフトなど複数の
大手企業のアフィリエイトリンクが仕込まれていることもあったという。

 エデルマン氏は、アフィリエイトで広告費が支払われる基本的な条件として「View、Click、Buy」の3つを挙げる。つまり、ユーザーがそのWebサイトを訪れたかどうか、ユーザーが実際にアフィリエイトリンクをクリックしたかどうか、そして例えば7日以内に物品を購入したかどうか
だ。同氏は「当然これらの例では条件を満たしていません」と述べる一方で、「しかし、これはある意味で非常に魅力的な犯罪です」とも付け加える。「仮に銀行の預金を盗めば発覚は容易ですし、被害者は激しく怒るでしょう。しかし、この広告構造自体を狙った犯罪は非常に気付きにくく、あきらめてしまうケースが大半です」と語り、オンライン広告の不透明性が
犯罪の抑止を難しくしていると指摘する。

 エデルマン氏の想定によれば、こうした詐取による被害額は年間で1億ドル規模にのぼる。今や新聞を抜いた日本のインターネット広告費は、年間で7069億円に到達しているが(2009年、電通発表)、その1%以上と考えると非常に大きな金額だ。「これらの被害額は前年に比べて増加傾向にあり、オンライン広告の
市場が拡大すれば同様に広がっていくでしょう」(エデルマン氏)。

●検索エンジンにおける競争の重要性

 もう1つトピックに挙がったのはYahoo! JAPANとGoogleの提携についてだ。これまで日本の検索エンジンシェアは、GoogleとYahoo! JAPANが大きく二分する形の競争型市場となっていたが、Yahoo! JAPANがGoogleの検索エンジンを採用したこと
により、一気に寡占状態に突入している。すでにヨーロッパでは、Googleの検索エンジンシェアが90%以上、場合によっては95%以上の地域もあるが、この不健全な状態では“オンライン広告の不透明性”が最大化されるとエデルマン氏は警告する。

 同氏は「単一の検索エンジンがあまりにも力を持つと何が起こるのか。1つ起こりうる問題として、広告主はこ
れまでよりもたくさんの費用を払わなくてはいけなくなるかもしれません。通常は例えば、クリック数と商品の販売数を見て広告の価値を判断します。しかし、あるトリックを使うことで、広告主から余分な費用を払わせることができるのです」と続け、検索連動広告を利用した2つの例を示した。

 1つは検索時のタイプミスに対する結果として広告を表示し
、ユーザーがそれをクリックするケースだ。例えば、あるユーザーが老舗デパート「Saks Fifth Avenue」のWebサイトを見るためにアドレスバーに「www.saksfifthaveune.com」(スペルミスしている)と打ち込むと、その上位には本来ユーザーが見たいと思っていた「www.saksfifthavenue.com」のリスティング広告が表示される。そして、ユーザーがここをクリックすれば、
それに応じた費用をSaks Fifth Avenueが負担することになる。

 もう1つの例は、サードパーティが提供するツールバーを使って検索連動広告を経由させるというもの。「例えばこのSmiley Centralのツールバーをインストールすると、Webブラウザがこのような形になります。本来アドレスバーがあった位置に妙なボックスが配置されているのに気付くでしょう。
このMy Web Searchに、楽天のWebサイトへ行きたいと思ったユーザーがrakuten.co.jpと入力したとします。先ほどの例とは違い、URLを正しく入力していますね。(ユーザーが期待する)本来の挙動ではここから直接、楽天のWebサイトに飛ぶはずです。しかし実際は、Googleのリスティング広告に誘導されています。もしユーザーがこの広告をクリックすれば、楽天は
Googleに広告費を支払わなければなりません。これらの事例は、広告主の弁護士が申し立てをして返金交渉をしてしかるべき状況ですが、Googleは一切応じていません」。

 実際エデルマン氏は、こういったケースで自分の顧客から依頼され、不当に広告費を請求されているとして法的な書類をGoogleに提出した。しかし、Googleはこれに応じず、代わりに契約
内容へ左の文言を追加したという。

 「Googleが広告を掲載する場所にGoogleは広告を載せることができる? まったく訳が分からない文章で、具体性がありません。Googleは広告に対してどんなことでもできるということを明示しているかのようです」とエデルマン氏。

 「また、Googleが9割のシェアを握るオーストラリアでは、これよりもさらに“
意地悪な条件”が付加されています。例えば、もし苦情がある場合には、なぜかカリフォルニア(Google本社がある)よりも遠いGoogleアイルランドに通知する必要があり、必ず2回申し立てを行い、1つは“確認付きファックス”を……これはどういう意味なのか私も分かりませんが、そしてその写しを1晩で到着するクーリエ便で送らなくてはなりません。しかしもちろん、
(Googleからの)回答はEメールで送られてきます」。

 Googleへ苦情を申し立てる際に、Googleアイルランドにクーリエ便で書類を送る妥当な理由がどんなものかを想像するとほとんど笑い話のようだが、もし笑ってしまった人は日本の利用規約(9.雑則)がどうなっているかを確認してみるといい。

●Yahoo! JAPANとGoogleの提携による国内ユーザー
への影響

 たった1つの検索エンジンが強大な力を振るい、インターネット上の情報にバイアスをかけ始めたらどうなるだろうか。「未来世紀ブラジル」のような世界になる、というのは冗談としても、検索エンジン市場の独占によってWeb検索のイノベーションは停滞していくとエデルマン氏は予測している。

 同氏は、検索エンジンをGoogleに切
り替えたAOLを引き合いに出し、同じ単語で検索した際の情報の差を指摘する。「ここでサンフランシスコのホテルを検索してみましょう。Googleで検索すると、地図もあれば、ホテルの住所や電話番号もあり、地図にはそれぞれの場所を示すピン、そして利用者の詳細なレビューも出ます。一方、AOLで検索した結果にはこれらの最新機能が反映されていません。する
とユーザーは今後Googleを使うようになり、AOLは弱体化していくでしょう。おそらくGoogleのエンジンに切り替えてから1、2年はAOLにもすばらしいデータが渡されていたはずなのですが」。そしてこれはYahoo! JAPANでも起こりうることだと警告する(ただしヤフーの井上社長は、検索結果に「付加価値を付ける自由度は極めて高い」と語っており、ここで指摘された
地図や天気などの要素はGoogleの検索エンジン以外から表示する部分に相当する)。

 続けてエデルマン氏は「Googleは嘘をついている」とも非難している。“人為的バイアスのない形で情報にアクセスできる”というのがこれまでGoogleが繰り返してきた基本理念だが、一方で非常にマイナーなGoogleの自社サービスが、ある特定の単語で検索すると一番上に表
示されたことがあるという。「試しに単語の後ろにカンマをつけると、不思議なことにこれらの結果は一変します。そういった結果を示す単語は私が調べただけでも2600以上ありました。彼らはマニュアルでの介入をしない、つまりハードコーディングをしない、という約束を破っていた可能性があります」。

 また、Googleが個人のプライバシーを軽視しが
ちな企業であることもエデルマン氏の懸念を強いものにしているようだ。例えばGoogle Toolbarの問題。Google Toolbarの導入後にユーザーがその利用を停止しても、プログラムはバックグラウンドで動き続け、ユーザーが閲覧したページなどの情報をGoogleのサーバに送っていたという(エデルマン氏のブログでは動画付きで説明されている)。「この問題を私が公開した
日にGoogleはこの機能を停止しました。このようにGoogle Toolbarは一方的にアップデートできる仕組みですが、再び同じことが繰り返されない保証はありません」。

 ちなみにGoogleは、2010年だけで見てもStreet View(街中を走り回る写真撮影用の車両でメールやパスワードを含むWi-Fiのデータも収集していた)やGoogle Buzzで、プライバシーに関する“不祥事
”を起こしている。

 エデルマン氏は「検索エンジンがたった1つになれば、ユーザーの選択肢はなくなり、プライバシーは保たれず、Webで何を見つけられるかは検索エンジンを持つ企業が決定することになります」と述べ、検索エンジン市場の競争の重要性を繰り返し強調した。「ヤフーとの技術提携で彼らはサーバの共用を明言しており、データの分離を約
束しているとはいえ、Googleが“信じてほしい”と言っても本当に信じることができるのでしょうか(ヤフーの検索連動広告に関する情報にアクセスできるのは、保守管理などの技術的な業務に限定された米Googleの技術部門の一部と説明されている)。独占禁止法は市場や消費者を守るために一世紀かけて作られてきた法律だということを思い出すべきです」。


 エデルマン氏の懸念が現実の問題として表出するかどうかは今後の動向次第だが、彼が主張する“可能性”については意識しておく必要があるかもしれない。

 12月2日、公正取引委員会はヤフーとGoogleの技術提携に関して、「現時点において独占禁止法上の措置をとるべく引き続き調査を行う必要はない」との判断を改めて公表(PDF)したうえで、情報提供
を受け付ける専用メールアドレス(kensakukoukoku@jftc.go.jp)を設置し、「引き続き注視する」と述べている。【後藤治,ITmedia】


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引用元:エルソード rmt

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